日本はすでに高度成長が頭打ちになり、バブルがはじける寸前に来ていました。 高賃金と円高によってコスト高に悩む日本の企業の一部は、すでに生産基地をコストの安い韓国と台湾に移していたし、その韓国も台湾も日本のあとを追ってコスト高に見舞われることになっていたので、その次の生産基地として、タイ・マレーシア、そして、さらにはフィリピンやインドネシアが投資先として選ばれるようになっていました。
中国がその中に勘定されなかったのは、中国が共産党の治下にあって、竹のカーテンによって遮られていたからです。 しかし、40年に及ぶ計画経済による実験の結果は、「悪平等は不平等よりまだ悪い」ということになり、早くそうした呪縛から逃れたいという意識が、トップの座に着いた都小平に改革開放を迫る時期に来ていたので、私は経済発展の主導権はまもなく中国に移るだろうと直感しました。
というのも、農業では自由市場を認め、工業では香港や台湾の協力を得るべく4つの経済特区を創設して、すでにかなりの成功を収めていたので、体制そのものの革命的転換はそう遠いことではないと考えられたからです。 たまたま1997年に香港の返還を控えており、共産主義とそりの合わない香港人が大挙して海外への移民を始めていたし、共産主義に対するアレルギー反応は日本でもかなり強いものがありましたから、「共産主義の傘下に入ったら香港はゴーストタウンになるだろう」という見方が日本のジャーナリズムの大勢を占めていました。
また工業については台湾企業の大陸進出が始まり、食品・ガラス・セメント・繊維・雑貨などのオールドエコノミーからIT関係の先端産業に至るまで、ほとんどの生産事業が大陸に工場を設けて生産を始めたので、みるみる工業化にスピードがかかり、対米輸出で黒字幅が日本のそれを抜くようになりました。 その陰にあって中国の対米貿易に大きく貢献しているのは、台湾企業であると言っても過言ではありません。
その一方で、バブルがはじけたあとの日本では高賃金になってしまったことと、円高になったことが輸出基地としての魅力を失わせてしまいました。 日本入はもの作りにこだわる一方で、日本の土地にしがみつく習性がありますから、出それに対して、私はよく旅行をしていて現場を自分の目で見ていましたので「返還によって香港が大陸に呑み込まれて消えてなくなってしまうことはない、大陸が香港化するのだ」と主張して、わざわざ香港に乗り込んで不動産を買ったり、株に投資したりしました。

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